『東京陰陽師~ホワイトデーの場合~』


普段なら絶対に揃う事がないだろう面々が、
天現寺橋事務所の前で鉢合わせをし、
お前もかと、それぞれ目だけで会話をしたのが五分前。

そして現在、三人仲良くソファに座っている。

彼らが見つめる先は、
簡素な一室には不似合いな、蓮華を模った台座。

そこに見慣れた黒髪の陰陽師が、
見慣れない格好で飴を舐めている。
ちらちらと白い歯から覗く舌が、妙に色っぽい。

幾度も抜き差しされる飴は、天現寺橋の唾液と混ざり、
くちゅくちゅと滑った音をたてている。

「いいものプレゼントしてくれたら、もっと奮発してあげるよ」
招待状だと、天現寺橋付きの式神から手渡しされたカードには、
確かそう書いてあった。

「…………」

その言葉の意味を、今も計りかねている三人は、
同じセリフを飲み込んだ。
――あいつは何をしているのか、と。

しかし、思考とは裏腹に、
表に出る反応は三者三様ながらも素直だ。

四谷は、まるで芝居を見物しているかの如く微笑み、
目黒は無表情のままながらも、視線は外さない。

上大崎に至っては、頬を染め下を向いているが、
それでも飴が動く度に行為を連想させ、肩を跳ねさせている。

つまるところ、誰も帰らない。

取り敢えず招待されたのだからと、
三人はそれぞれの思いを胸に、ソファに座り続けていた。

「――バサラ。これで良かったのか?」

三人が帰った後、天現寺橋は乱れた襟を正しながら、
バサラに視線を送る。
ひらひらと浮遊する紙っぺらは、ひどく楽しげに笑った。

「バッチリです、せんせー! 
これで来年のバレンタインが楽しみですねー」

パチパチと手を叩いて褒め称えるところを見ると、
どうやら作戦は成功らしい。

「そうか。楽しみだ」

天現寺橋は、来年のチョコの山を想像して、
口の中で小さくなった飴を、かりりと噛んだ。

■おまけ『その後~各反応~』

上大崎
「……まったくもう。あいつらが居る前で、あんな姿を見せて。
僕だけにならまだしも……。……来年、チョコの数増やそうかな」

目黒
「あいつ酔ってたのか? 
よく分からねぇが、まぁいい暇つぶしにはなった。
つーか、プレゼントって何の話だ?」

四谷
「ふっ、中々どうして愉快な興だった。
触れなば落ちん風情がまた……。
ふふ。礼として、私の体を献上品として陰陽師にやろう」


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絵:坂本あきら シナリオ:穂波